2025年12月8日

雲

今年は気がつくともう十二月になっていました。空が高くなることも、うろこ雲を仰ぎ見ることもなかったような気がします。

近年の気候変動が夏を拡大させて、春と秋とを侵蝕しています。春夏秋冬の四季の移ろい方は変わりつつあります。秋分を過ぎて暮れ早くなって、意識の中では秋の訪れを期待していても、寒さの肌感が伴わないので暦の時間が巡る感覚が追いつきません。

先日、空港で１時間以上も待ち時間があって、出発ロビーで時間を潰すことになりました。
「スマホ神経衰弱」などと書いたあとで、この時間、じゃあスマホを見ないでどう過ごしたらよいのか自分に問いかけました。折しも、巨大なガラスの向こうの空に雲が浮かんでいました。季節の特徴のない、ごく普通の雲です。
雲はゆっくりと流れています。ある部分の形象に頭の中で望遠レンズを向けると光の輪郭がほどけて、雲がちぎれ、小さな白い塊はやがて空の青に消え入ります。大きな塊の雲は口を開けた龍のように見えます。
離陸する飛行機を見送って、また雲を見遣るとわずかな時間に雲が流れて龍は消え去っていました。

しばし退屈を忘れて雲を眺めて愉しんでいました。遠くを見ていると自ずと眼の筋肉がほぐれ、頭の緊張も緩みます。スマホやパソコンに疲れたら、少しの時間、雲を眺めてみるのはどうでしょうか。