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ハナコ短信

2024年8月28日

生きる時間

厳しい暑さが続いていますが、八月も旧盆を過ぎると夏の終わりが近いと感じます。草木の万緑の世界は盛りを過ぎ、夕暮れは日に日に早くなり、昆虫の勢力図が塗り替えられて行きます。
法師蝉の声を聞くと、小学校の頃の夏休みが終わる淡い寂しさが脳裏によみがえります。あの頃は1日も1年もずいぶん長かったような気がします。大人になると、なぜ時が過ぎるのが早く感じられるのでしょうか? 物理的な時間は変わらないはずなのに……

ある心理学者は、生きた長さに占める1年の割合が小さくなるからと説きました。つまり10歳の1年は1/10、50歳の1年は1/50というわけです。
子供時代は毎日が新たな発見や学習の繰り返しなのに対して、年齢を重ねるにつれて日常は単調に成りがちで、およそ定まった枠組みの中で1週間が過ぎて行くという事情もあるでしょう。
過ぎ去った時間はたいてい短かったと感じるものですが、大人になっても、たとえば、印象深い出来事や初めての土地への旅行体験などを回想してみると、長く密度の濃い時間を過ごしたと思えるはずです。

地球上の生きものは、微生物からヒトまで、進化の歴史の過程で育まれた生物時計(概日時計)を体内にもっています。生物時計は24時間の自転周期によって昼夜を分かつ地球環境と密接に関係しており、中枢神経系と時計遺伝子によって睡眠、自律神経、ホルモン分泌などの制御が行われています。1年の内因性のリズムを刻む概年時計も存在し、冬眠、繁殖、渡り(鳥)などの行動を制御していることも知られていましたが、その仕組みは不明でした。最近、名古屋大学の研究チームにより、メダカに概年時計が存在することが明らかにされ、その脳内で1年のリズムを刻む概年遺伝子が世界で初めて同定されました。
私たちの時間感覚に概年時計が関連しているのかはわかりませんが、こんな説があります。

タンパク質の新陳代謝速度が体内時計の秒針である。加齢と共にその代謝回転が遅くなり、その結果、一年の感じ方は徐々に長くなっていく。にもかかわらず、実際の物理的な時間はいつでもおなじスピードで過ぎてゆく。「つまり、年をとると一年が早く過ぎるのは… 実際の時間の経過に、自分の生命の回転速度がついていけていない。そういうことなのである」(福岡伸一『動的平衡』)

とは言え、私の視点から眺めれば時間が過ぎるのが年々早くなるのです。

 

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