タムラクリニック

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2024年3月4日

子供の時分には空を飛べたのに、大人に近づくにつれて高度が低くなって、遂に飛べなくなるのは何故でしょうか。これは夢の中のお話です。

古来より人々は夢を神や祖先からのお告げと考えて、夢の内容から未来への指針を見出そうとしました。ギリシアの神アスクレピウスは治癒神として祀られ、信仰に基づいて神殿に付属する寝室で一夜を過ごすと、夢の中で治療が授けられたり、神官の暗示によって病気平癒がもたらされたりしました。もっとも神殿には円形劇場、運動施設、温冷浴場なども併設されており、心身両面からの治療が行われていました。日本でも同様の信仰が見られ、石山寺縁起絵や長谷寺霊験記などに病気癒しの話が記されています。
20世紀には、夢をその人の深層心理や文化的背景を理解する手がかりと考えて心理療法のために解釈や分析をする学派が生まれました。

睡眠の科学的研究は20世紀半ばに始まりました。
睡眠の状態はレム(REM: rapid eye movements)睡眠とノンレム睡眠(ステージⅠ〜Ⅳ)に大別され、約90分の周期が一晩に数回繰り返されます。レム睡眠は急速眼球運動と筋弛緩によって特徴づけられる浅い睡眠です。夢が多く現れるのはこのレム睡眠中で睡眠全体に占める割合は、新生児で50%、幼児〜壮年で20%前後、高齢者では15%程度の割合になります。レム睡眠とノンレム睡眠が交互に繰り返される睡眠は記憶の統合と定着に何らかの役割を果たしていると考えられています。睡眠中の脳内で行われる情報処理の一部が認知されたものが夢というわけです。
見た夢がきっかけとなって、覚醒時には成し得なかった発見や創造が生まれることもあります。これは脳の判断や論理的思考を司る部位が休止しているため、脳内の情報が自由に結びつきやすくなるためと言われています。
夢がもたらす創造性は科学や芸術といった分野に限らず、私たちの日常のもっと身近なところにも恩恵をもたらします。考えても悩んでも解決の糸口を見出せない夜は、考えるのを止めて、パソコンやスマホも休止して、ハーブティーでも飲んで少しリラックスして寝て下さい。解き放たれたあなた自身の脳が夢を通じて何か新しいひらめきを伝えてくれるかも知れません。

物語性のある、でも現実にはあり得ないような不思議な夢はレム睡眠時に多く現れます。また、レム睡眠中は脳の運動系の抑制回路が働いて筋肉は弛緩し、感覚器からの入力も遮断されるため、長く空中に浮遊したり空を飛んだりできるようです。小学生も大人もレム睡眠の割合はほぼ同じなので、大人になると空を飛べなくなるのには何か別の理由があるのかも知れません。

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